宝物を拾いました。この物語には、ずっとそばにいてほしい・・・
ミミズクと夜の王 (電撃文庫) 紅玉 いづき 磯野 宏夫 心に響く小説は、本を開くとすぐ分かります。 これはすごい、と。 今回もきました。 これはすごい・・・ すっごく感動したとか、泣いて泣いて泣きまくったとか、そういう激しい感動ではありません。 心にポッと、小さなろうそくが灯るような幸せがあります。 ずっとそばに置いていたい、宝石のような物語でした。 言葉って、なんて未熟なんだろうと思います。 感情を表現しきれません。 細かな感情描写は無いのに、この物語はこんなに心に響く。 心はあれこれ言葉で表現できるものではありません。 直観に近いところがあります。 突然ふっと湧き起こる。 その一瞬の出来事を短い文章で連ねています。 長々と表現していたら一瞬の輝きが消えてしまいます。 そんな短い文章がダイレクトに心に響く。 素敵な本に出会ったな、と思います。 人は、感情がないと人ではありません。 愛、哀、喜といった心の動きが人をつくります。 これは、ひとりの少女が人間になる物語です。 優しさに触れ、自分を見つけていきます。 全体を通して、この小説には「幸せ」という言葉が多く使われています。 しかしその単語は、物語の進行とともに深みが増していきます。 同じ言葉でも、同じ意味ではありません。 ミミズクの成長に伴って(様々な感情に触れ、心を知るにつれ)、幸せの意味が深くなってゆくのです。 感情とは、人の持つ最高の宝物ですね。 この本に登場するすべての美しいもで、私の心は満たされています。 |
人と自然
RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧 (角川文庫) 荻原 規子 酒井 駒子 現代の私たちは、自然に対してどういう感情を抱いているのでしょう。 人間は、自然の上には決して立てないということを忘れているような気がします。 そもそも、人間も自然の一部です。 なのに、環境破壊など人間は自然にはむかうことが多い。 もともと日本人は自然を愛し、自然と共に生きてきた民族です。 それを考えると、自然との対話が薄くなった現代を寂しく思います。 この作品に登場する山伏や陰陽師といった人々は、人知を超えたものと古代から関わってきました。 それが自然との対話になり、地球と共存していたのです。 そんな彼らが少なくなり、地球と話さなくなった人間は滅びの一途をたどります。 今の時点では、これから物語がどう転ぶのか不明な点が多いです。 しかし、姫神は人類滅亡をほのめかしました。 この先どうなるのか、まだまだ楽しませてくれそうです。 このシリーズを読んでいると、人間と自然の関わりについて考えさせられます。 自然の恐ろしさ、偉大さ、そういったものが、姫神や神霊を通して伝わってきます。 それは底知れぬ恐怖であり、神々しく美しいものです。 古代の人がなぜ、自然を愛したのか少しだけ分かったように思います。 今とは異なる、澄んだありのままの自然があったのでしょう。 神さまだって、本当に人の心の中にいたのでしょうね。 さて、泉水子というひとりの少女の成長を描いた小説としても面白いです。 感情描写、情景描写共に細かいので、映画を見ているようにはっきりとその場を想像できます。 泉水子が、自分を変えようと必死で努力していることもしっかり伝わってきます。 読んでいる私も励まされ、とてもいい刺激を受けています。 まだまだ全体が見えません。 これからどうなるのでしょう。 続きを読みたくて読みたくて仕方がないです。 ということで、早速次巻いってみよー!!! |
出会いと別れを繰り返して、私たちは生きている。
ゆんでめて (新潮文庫) 畠中 恵 これは面白い!!! 物語構成がすごくユニークです。 人生で、幾度か岐路に立たされます。 あのとき別の道を選んでいれば・・・ そんな後悔は誰にだってあります。 しかし、たとえその時別の道を選んでいたとしても 悲しいことも起こるし、嬉しいことも起こるでしょう。 どちらを選んだから悪いということはないんです。 もう一方の道には、今とは違った未来があるかもしれない。 しかし今得たものは無いかもしれない。 どちらかを選ぶことで、一方は捨てることになります。 と同時に、新しい何かを得ることになります。 出会いと別れ。 私たちは常に何かを失い、何かに出会いながら生きているんです。 |
本物の愛は、あとになって気が付くものなんです。
斬られ権佐 (集英社文庫) 宇江佐 真理 最後まで読んで、この作品の良さが分かりました。 淡々とした日常生活。 波乱万丈な冒険小説が好きな私としては物足りないなぁと思っていました。 しかし、だからこそ権佐の愛を身近に感じます。 私たちの日常生活とほぼ変わりない毎日。 そんな時起こったある事件。 愛する家族を守るため、権佐は自身を犠牲にします。 「あ・・・、愛ってこういうことか」 その時分かりました。 普段の何気ない行動が実は愛でいっぱいだったり、憎まれ口をたたいてもそれは愛情の裏返しだったり。 大切なことは、いつも後で分かるものです。 そして、その人を本当に大切に思うものです。 本物の愛は、あとから気づくものなんです。 |